【商品概要】
叢の会(編)
発行:文学通信
A5判 並製
価格 2,100円+税
【内容紹介】
桃太郎のライバル柿太郎! 漢方薬のラブストーリー!
今の「絵本」の形式をもった、子どもから大人まで楽しんだ草双紙(くさぞうし)が創り出されたのは、十八~十九世紀。京都・大坂の上方を追いかけ、文化を発展させてきた江戸で、絵と文の総合的な表現による大衆読み物が登場しました。
本書は、その草双紙がどのようなものか、どのような作品があるのか、草双紙から何が読み取れるのか、その世界を味わうための、読解マニュアルです。
全体は4部構成。「Ⅰ 江戸の絵本=草双紙―本の形と表現方法を知る」では本の形と、草双紙を読むうえで基本となる表現方法を説明。「Ⅱ 絵入り読み物の歴史を知る」では、絵と文の総合的な表現の歴史を解説。草双紙にいたるまで、また草双紙以後の歴史もわかります。「Ⅲ 草双紙作品の作り方・読み方」では、キャラクターや生活・文化などなど、様々な切り口で草双紙がどう作られてきたか、どう読めばいいのかをレクチャー。最後に「Ⅳ 草双紙と現在」。ここでは現在のマンガ・アニメとのつながりや、小学校で草双紙を扱った実践例などを紹介します。
本書一冊で、江戸の絵本の楽しみ方がわかります。
執筆は、黒石陽子、石田智也、内ケ﨑有里子、奥田粋ノ介、加藤康子、佐藤智子、杉本紀子、瀬川結美、手塚翔斗、檜山裕子、細谷敦仁、森節男。
【目次】
<口絵>おかしく、ほほえましい場面、大集合!
1 桃太郞にはライバル柿太郎がいた?
2 漢方薬たちのラブストーリー
3 猫の怖いおはなし
本書の読み方―草双紙の世界へようこそ!
草双紙の世界へようこそ!
本書の読み方
(1)絵を読み解いてみる
(2)表現の特徴をつかむ―約束事と特異な表現方法
(3)絵巻物・絵入り冊子本・絵草紙・絵本・マンガ・アニメーションとのつながりを知る
(4)魅力を発見する―様々なおもしろさ
(5)いまと異なる価値観を考える
(6)これから草双紙をどのように読み、活用するか
草双紙の書名の扱い方
Ⅰ 江戸の絵本=草双紙―本の形と表現方法を知る
<江戸で出版された草双紙とはどのような本だったのでしょうか。草双紙を読む時に知っておきたい用語や表現方法を説明します。>
1 本の形―版本の形と名称
(1)表紙、題簽、外題、角書
(2)丁、版心、匡郭
(3)初版、再版、改題
(4)巻、画工・作者、彫師・刷師・版元
2 登場人物の名前の示し方―袖の文字
3 キャラクターの描き方―擬人化
4 時間や場所の示し方―異時同図
5 流行の取り入れ方―当世化
Ⅱ 絵入り読み物の歴史を知る
<絵と文の総合的な表現を持つ絵入り読み物の流れを説明します。草双紙にいたるまで、また草双紙以後の歴史もわかります。>
1 江戸時代以前から江戸時代の前期
2 江戸時代の中期
3 江戸時代の後期
4 明治時代以降
Ⅲ 草双紙作品の作り方・読み方
<草双紙の作品はどのように作られ、どのように読むことができるでしょうか。絵に注目しながら具体的に説明します。>
1 キャラクター編
<草双紙作品にはどのようなものが登場するでしょうか。興味深いキャラクターを紹介します>
1 桃太郎のライバル柿太郎 『風流 桃太郎柿太郎 勇力競』
2 主役は桃太郎? 『桃太郎一代記』
3 変身対決 『金平猪熊退治』
4 鬼には鬼の、暮らしあり 『〔つわものてから〕』
5 江戸時代の人気ヒーロー鎌田又八 『鎌田又八化物退治』
6 小さいからこそ 『諸道 まめ介 息才男』
7 袖の文字から知る秘密 『〔源太夫〕』
8 慳貪爺を描く 『花咲爺誉魁』
9 悪に染まった弟 『名将 大江山入』
10 草双紙に描かれる化物たち 『平家化物たいぢ』ほか
2 生活・文化編
<江戸時代の生活や文化はどのようなものだったのでしょうか。草双紙作品に見られる生活や文化を紹介します。>
1 雨やあられはどうして降るの? 『おにの四季あそび』
2 江戸の出産 『〔鼠よめ入〕』
3 病鉢巻が示すこと 『再板 桃太郎昔語』・『鎌倉金沢 朝比奈切通』ほか
4 子どもの本音 『いろは文字 寺子短歌』
5 神の力で男が女に 『〔男珠取〕』
6 物好き大臣の驚くべき再現力 『〔しほかま〕』
7 流行語が大活躍 『〔にほいふくろ〕』
8 ヘンテコ療治 『仙伝秘法 趣向気工』
9 情報ネットワークで金儲け 『万民大福帳』
10 アルファベットも読んでいた? 『三国昔噺 和漢蘭雑話』
11 お出掛け心をくすぐる仕掛け 『〔八わたしらす〕』ほか
12 柳の下には幽霊がいる 『雪中濃両敵』ほか
3 時間と空間の記号編
<草双紙では、時間や空間の移動をどのように表現しているでしょうか。作り手と読者との表現の約束事を説明します>
1 雲形郭線の効用 『清盛一代記』ほか
2 窓の効用―こっそりと読者に教える方法 『和泉式部花鏡』ほか
4 絵と文のコラボレーション編
<絵と文の総合的な表現は草双紙の特徴の一つです。作り手はどのような工夫をし、読者はどのように読み解いていったのでしょうか。>
1 まるで動画のような 『鎌倉金沢 朝比奈切通』
2 ページに潜む百人一首 『〔猿廻春花壻〕』
3 源氏物語をリメイク 『〔女三宮簾の追風〕』
4 長編を読み解く 『通俗三国志』
5 一代記を読み解く 『義経一代記』
6 鞍馬山の少年 『敵討鞍馬天狗』
7 草双紙ならではの読み方 『鐘銘 道成寺根元記』
8 殺されたのは 『敵討美女窟』
9 鍵と型で読む 『分福 丹頂鶴』
10 口絵で見せる 『忍弾仇汐汲』
5 芸能とのコラボレーション編
<江戸時代を代表する文化の一つは、人形浄瑠璃や歌舞伎などの芸能です。草双紙の作品中に芸能はどのように反映されているでしょうか。>
1 赤穂浪士は悪の手先 『敵討連理の梅』
2 役者とキャラを重ねて 『菅原伝授手習鑑』
3 舞台裏を描く 『尾上伊太八局岩藤 帰咲故郷之錦絵』
6 ヒーローと残酷な表現編
<現代の人々は、ヒーローの描き方や残酷な表現に違和感を抱くかもしれません。現代と異なる価値観を草双紙の中に見てみましょう。>
1 圧倒的なヒーローをどう読むか 『きんときおさなだち』
2 残酷な表現をどう読むか 『兎大手柄』
Ⅳ 草双紙と現在
<草双紙が持つ要素は今でも生きています。どのように現在とつながっているか、紹介します。>
1 草双紙から続くもの 『風流 魚鳥大合戦』ほか
2 マンガから見る草双紙 『〔つわものてから〕』ほか
3 子どもたちに草双紙の魅力を伝える
4 もっと草双紙を楽しむために
(1)もっと知りたい
(2)もっと作品にふれたい
(3)本文(くずし字)を自分で読んでみたい
あとがき
資料
1 図版の出典情報一覧
2 主な参考文献一覧
執筆者一覧
【著者プロフィール】
叢の会 (ソウノカイ) (編)
1979年4月、故小池正胤東京学芸大学名誉教授を中心に、東京学芸大学大学院生を同人として「叢 近世文学演習ノート」を創刊。赤本・黒本・青本の翻刻、注釈、解説を中心に年一冊発行。後に「叢 草双紙の翻刻と研究」と改題した。2019年第40号をもって終刊。
その間に『江戸の絵本-初期草双紙集成-』(Ⅰ~Ⅳの全4巻・国書刊行会・1987~89年)、『黒本・青本の研究と用語索引』(国書刊行会・1992年)、『草双紙事典』(東京堂出版・2006年)、『江戸の子どもの絵本 三〇〇年前の読書世界にタイムトラベル!』(文学通信・2019年。『江戸の子どもの本 赤本と寺子屋の世界』笠間書院・2006年を改訂)などを刊行。
HP:https://www2.u-gakugei.ac.jp/~sounokai/
本書の執筆は、黒石陽子、石田智也、内ケ﨑有里子、奥田粋ノ介、加藤康子、佐藤智子、杉本紀子、瀬川結美、手塚翔斗、檜山裕子、細谷敦仁、森節男。
【元ツイート】
https://twitter.com/CatsMeowBooks/status/1661532039533953025